筒井康隆 1990年作品
短い小説なのに、物凄く読むのに時間がかかった。
読み始めてすぐ感じる違和感。
今、喋っている人物は誰なのか?
分からなくなってきた。
ははぁぁん、これは「叙述トリック」だな。
だまされないぞ!
読者は何度も読み返す事になるだろう。
そして連続殺人事件が始まる。
読者は違和感と戦いながら読み進めることになるのだが、
多分、途中で根負けして最後まで読み進めてしまうだろう。
はっきり言って、この小説は推理小説としてはアンフェアです。
ロートレック荘の平面図までは良いが、そこに部屋割りの人物名が記入されているは、明らかに虚偽の事柄を読者に暗示している事になってしまうのではないだろうか?
しかし、ここにこそ著者の恐るべき罠が隠されている!
ある意味、ぎりぎりセーフなのだが、どうも納得がいかない。
なにはともあれ、最初から最後まで一言一句たりとも矛盾なく文章を創り上げた著者の執念深さには感服してしまう。
小説を読み終えて、最初は、この小説はSF作家ならではの推理小説に対するパロディなのかなとも思ったが、著者の本当の目的は他のところにある様な気がした。
上手く表現できませんが、人が無意識に感じてしまう「差別意識」という先入観を、人に知らしめたかったのではないでしょうか。
それにしても、短いけれど、疲れる小説でした。
★★★☆☆
テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌