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「霧越邸殺人事件」綾辻行人
霧越邸殺人事件
綾辻行人 1990年作

霧越邸殺人事件1


かなかな読み応えがありました。
著者の力量を感じる、700ページ近くもある
重厚な長編本格ミステリーです。
雪で閉ざされた山荘、連続殺人、見立て殺人、謎めいた住人等、
ミステリーの定番要素がてんこ盛りの作品です。

日本を舞台としながら、雰囲気はどこか外国的。
芸術や文学に関するうんちくも豊富で、
まるで外国のゴシックホラーを読んでいるような雰囲気。
幻想的でもあり、ミステリーファンにはたまらない
風味に仕上がっていると思います。

霧越邸殺人事件2


物語では、クリスティの「そして誰もいなくなった」や、
一連の横溝作品を思わせる、北原白秋の童謡に見立てた、
連続殺人事件が起こるのですが、
改めて歌詞を読んでみると、どことなく不気味。
せっかくなので載せておきます。

「雨」 北原白秋

  雨がふります、雨がふる。
  遊びに行きたし、傘はなし。
  紅緒のお下駄も緒が切れた。
 
  雨がふります、雨がふる。
  いやでもお家で遊びませう。
  千代紙折りませう、疊みませう。
 
  雨がふります、雨がふる。
  けんけん小雉子が今啼いた。
  小雉子も寒かろ、寂しかろ。
 
  雨がふります、雨がふる。
  お人形寢かせどまだ止まぬ。
  お線香花火もみな焚いた。
 
  雨がふります、雨がふる。
  晝もふるふる、夜もふる。
  雨がふります、雨がふる。

物語では、もう一つ、童謡が出てきます。
これも、せっかくなので載せておきます。

「かなりや」 西条八十

  唄を忘れた金糸雀は、後の山に棄てましよか。
  いえ、いえ、それはなりませぬ。

  唄を忘れた金糸雀は、背戸の小薮に埋けましよか。
  いえ、いえ、それもなりませぬ。

  唄を忘れた金糸雀は、柳の鞭でぶちましよか。
  いえ、いえ、それはかはいさう。

  唄を忘れた金絲雀は、象牙の船に、銀の櫂。
  月夜の海に浮べれば、忘れた歌を想ひだす。

誰もが、一度は聞いたことがある童謡ですが、
改めて歌詞を読んでみると、
これも結構、凄い内容です。
決して、無邪気な子供が歌う歌ではありません。
今なら、放送禁止になるかもしれません。
しかし、ある意味、
著者は、いい題材を見付けたと思います。

純文学好きの人が読んだら、
笑っちゃうような内容ですが、
市川崑監督が生きていたら、
是非、映画化してほしかったと
思わせてくれるような
良い雰囲気のミステリー作品です。



★★★★★


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「花の棺」 山村美紗
前回、「矢村麻沙子シリーズ」第1作目の「ガラスの棺」を読んだので、今回は「キャサリンシリーズ」の第1作目で、タイトルも似ている「花の棺」を読むことにした。
本作は山村美紗の長編第2作目で、1975年の作品。

花の棺1

初期の作品だけあって、プロットも凝っていた。
華道会が舞台なので、生け花による「見立て殺人」という趣向や、京都の地名の二条、三条、四条という通りの名前の順に、事件が起きるという展開も面白い。
勿論「トリックの女王」と呼ばれていただけあって、トリックもかなり練られている。
特に、雪で閉ざされた茶室での殺人は、雪に残された不可思議な足跡の謎と、密室殺人の謎という、二つの謎が組み合わされていて、かなりトリッキーな趣向になっている。
現実的には、こんなトリックが見破れないほど日本の警察は馬鹿では無いと思うのだが、こんなトリックを考えついた著者の発想力は見事だと思う。
もう一つ、トレーラーを使った死体消失のトリックもあるのだが、これは読んでいて、私も思わず手元にあったライターや消しゴムを並べて、検証してしまったほどです。
作品が古い事と、展開に多少の無理はありますが、挿絵もあるし、本格推理物を楽しみたい方や、トリックのバリエーションを増やしたいと思う方には、読んで損はない作品だと思います。
花の棺2   花の棺3
 余談ですが、この本の事をかみさんに話したら
キャサリンって日本人じゃないの?」
と言われました。
私はテレビの2時間ドラマを、ほとんど見ないので知らなかったのですが、テレビドラマでは、かたせ梨乃がキャサリンを「希麻倫子」として演じているみたいですね。
私はそれを聞いた時、希麻倫子
なんじゃそれ!
誰が考えたんじゃ!
と、思いましたが、きっと世間的には「希麻倫子」のほうが、名が通っているのかもしれません。
ちなみに原作でのキャサリンは、アメリカ副大統領の娘という設定になっています。


★★★☆☆


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