松岡圭祐 2003年作
目の前にある紙幣の束を、触りもせずに倍にしてしまう!
参考人らが口をそろえて、こう証言する奇妙な事件が多発。
担当になった警部補も、それを目の当たりにして呆然。
この事実を、どう説明したらよいのか?
ただ、お金を倍にしてくれるだけ。
何も要求もせず、
被害を被った者は誰もいません。
その目的は、いったい何?
必ず何かトリックがあるに違いない。
マジックのトリックを利用したものではないだろうか?
そして、放っておいたら、きっとこれは詐欺事件に発展する。
そう考えた警部補はマジックショップに赴き、
そのトリックを探るのですが...。
という展開の話。
なかなか興味深い内容の小説でした。
詐欺にマジックのトリックを使うというのは、
良いところに目を付けたと思います。
何もない無いところから物体が現れる、あるいは消える。
客の書いた文字を見ないで当てる。
なんてのは、マジックの常套テクニックです。
こういったマジックのトリックが詐欺に悪用された時の恐怖を
この小説は描いています。
詐欺にマジックのトリックを悪用すれば、鬼に金棒です。
お金をタダで増やしてくれたり、
競馬のレース結果を100%的中させてしまうのを
眼前にしたら、きっと皆、騙されてしまうでしょう。
恐ろしい話です。
一方、小説自体は、マジックのネタバレは興味深かったのですが、
逆を言えば、マジックのトリックに頼りすぎで、
小説の構成としては 少し物足りませんでした。
詐欺事件を扱っているので殺人も起きないし、
ストーリー展開も単調。
コンピューターウィルスを使った
国家的テロ事件まで物語は発展しますが、
その手法も犯人の動機も、
今ひとつといった感じを受けました。
しかし、前に述べたように、
詐欺にマジックのトリックを悪用するというアイデアは素晴らしく、
不可能を可能にみせるマジックのトリックを
惜しげもなく、次々と解き明かしていくのは、
実に痛快です。
世の中不況で、詐欺が横行していると聞きます。
うまい話には、必ず裏があります。
得をしたいと思う気持ちに、詐欺はつけ込んできます。
私は、セコイし、ぼんやりとしているので要注意です。
ケチな人ほど、詐欺に遇いやすいです。
★★★★☆
テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌